むかし、大国主さまが出雲の美保のみさきにおられたとき、白い波の穂先から、ががいものわれた実の舟にのって近づいてくる小さな神さまがいました。その神さまはみそさざいの丸はぎの毛皮を着ていました。大国主さまが名をおたずねになってもこたえず、まわりの神々もだれも知りません。
するとひきがえるが現れて「もの知りなかかしのくえびこがかならず知っておりましょう」と言いました。すぐにくえびこをよんで聞くと、「神むすびさまの子、少彦名(すくなひこな)さまでございましょう」とこたえました。
高天原(たかまがはら)につかいをおくり、母神の神むすびさまにうかがいますと、「この子はたしかにわたしの子です。たくさんいるこどものうち、ひとりだけ指のあいだからこぼれおちた子がいます。その子が少彦名です。大国主と兄弟のちぎりをむすび、力を合わせて国づくりにはげむように」とおつげになりました。
少彦名さまは小さな神さまで、大国主さまの手のひらであそんだかとおもえば、ほおまでとびはねてかみつくいたずら好きな神さまでした。けれども、かしこく勇気があり、大国主さまのたのもしい友となりました。
『古事記』『日本書紀』による、大国主命(またの名を大己貴命(おほなむちのみこと))と少彦名命の出会いの場面です。
少彦名命は、その登場のしかたも姿も、性格や才能も、とても個性的な神さまです。新しい知識と技術で人々の暮らしを豊かに変えていく少彦名命は、大国主命の国づくりに欠かせない相棒となりました。
小さな主人公が活躍する物語は、後の一寸法師や「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉おやじなどの物語にもどこか通じる、楽しい魅力があります。
また、少彦名命の正体を明かした久延彦命は、「山田のそほど」つまり案山子の神さまで、じっと動かずにことごとく天下の事を知るとされています。このことから、三輪では知恵の神さまとして久延彦神社にお祀りされ、受験生をはじめ学ぶ人々に信仰されています。


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