三輪の商店街に残っていた昔ながらの実力

三輪栄町かえしば

小料理屋「福づつみ」のおしながきは、裏返すと「当店の食材」になっています。
野菜、魚、肉、お米、加工品、調味料。
どこから仕入れているのかを、店主が書いています。並べてみると、福づつみの食材が、いろんなところからやって来ていることが分かります。

野菜や魚、肉など、毎日の料理に使うものは、基本的に三輪の商店街で仕入れています。八百屋さんで野菜を買い、魚屋さんで魚を買い、肉屋さんで肉を買う。昔なら当たり前だった買い方です。
福づつみがこの仕入れ方をしているのには、現実的な理由があります。店主一人で切り盛りする小さな店ですから、店を開ける準備をしながら、遠くの市場まで仕入れに出かけることはできません。それなら近くで、ということになるのですが、これがなかなか侮れません。
八百屋さんには八百屋さんの、魚屋さんには魚屋さんの、肉屋さんには肉屋さんの「目利き」と仕入れがあります。スーパーより少々高くなることはあっても、品ぞろえがよく、いいものが手に入ります。

三輪の商店街には、まだ昔ながらの実力が残っているのです。

考えてみれば、これはありがたいことです。
新しく小さな飲食店を始めようと思っても、近くに食材を仕入れられる店がなければ、車で遠くまで買いに行くか、大きな業者から届けてもらうことになります。三輪では、歩いて行ける商店街に、野菜を売る店があり、魚を売る店があり、肉を売る店がある。

福づつみという新しい店ができて、その店を昔から続いてきた商店が支えています。そして福づつみがそこで買い物をすれば、それがまた商店街の商いになります。
新しい店が古い店に取って代わるのではありません。昔からある店が新しい店を支え、新しい店が昔からある店のお客になる。そういう関係が、福づつみの毎日の仕入れの中にできています。福づつみは、商店街に蓄積されてきた商いの実力のおかげで営業できているのです。

もちろん、すべてが商店街の店でそろうわけではありません。お米や一部の魚、加工食品、調味料などは、できるだけ地元に近いところから、人のつながりを通じて手に入る良質なものを集めています。そのようにして足りないものを補いながら、福づつみの料理ができています。

「地産地消」というと、何か立派な取り組みのように聞こえますが、福づつみの場合、もっと自然体です。
近くにいい八百屋さんがあるから、そこで買う。
いい魚屋さんがあるから、そこで買う。
知っている人からいいものが手に入るなら、それを使う。
それを毎日続けていたら、こんな食材表になりました。まちの中で商いをするというのは、本来こういうことだったのではないでしょうか。

福づつみのおしながきを裏返して眺めていると、一軒の小料理屋の向こう側に、三輪の商店街と大和の風土・産業が見えてきます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました