大神神社の講社崇敬会大祭で、里唄 三輪社中は千本杵餅つきの音頭を取り奉っています。
千本杵は、大勢が細長い杵(竪杵)を持って一つの臼を囲み、唄に合わせて餅をつく餅つきです。昔から大和では、祭礼や婚礼、棟上げなどのおめでたい折に、村中総出で千本杵の餅をついたといいます。
大神神社の講社崇敬会大祭には、全国から三輪の大神さまを信仰する講員、崇敬者の皆さんがお参りになります。その皆さんと御神前に集い、これまでの無事を感謝し、これからの健康と幸せを願って、祝いの餅をつきます。
桃俣の祝い唄で餅をつく
千本杵餅つきの音頭で歌うのは、宇陀郡御杖村桃俣に伝わる「桃俣伊勢道中唄」と「ひょうたんや節」です。桃俣伊勢道中唄は祝い唄。ひょうたんや節は餅つき唄です。
桃俣の秋祭りでは、ひょうたんや節で御供の餅をつき、伝統の獅子舞奉舞の締めくくりには伊勢道中唄で囃します。
その唄を三輪の御神前で歌います。音頭を取るのは、太鼓打 源五郎。
「皆の健康と幸せを祝いまして」
手拍子が始まり、音頭に合わせて杵が上がります。
「はー、よいしょ、ヨイショ」
掛け声とともに杵が下ります。
見ている人も、いっしょに
千本杵餅つきでは、餅をつく人だけが参加者ではありません。
音頭を取る人がいて、杵をつく人がいて、その周りで手拍子をする人がいて、掛け声を掛ける人がいます。
そこで、餅つきを始める前には、皆さんにも掛け声のお稽古をしてもらいます。
「大きな声を出すほど、神様にいただけるお力も大きくなります。三輪山の神様の空気を胸一杯に吸い込んでいただきまして、御陽気にまいりましょう」
見る人とする人を分けてしまわず、その場にいるみんなで声を出し、手を叩き、力を合わせて一臼の餅をつき上げます。
それが、里唄 三輪社中の千本杵餅つきです。
「ヨイショ」から始めればいい
里唄 三輪社中では、こうした場を重ねながら、一緒に唄い、囃す人を少しずつ増やしていきたいと思っています。
最初は何も知らなくてもかまいません。
まずは手拍子。そして、
「ヨイショ」
と声を出す。
何度も一緒にやっているうちに、掛け声を覚え、合いの手を覚え、唄を覚えていきます。
そうして、音頭に合いの手を入れられる人が増え、その中から、いつか自分で音頭を取る人が出てくる。
里唄は、教わってから参加するものではなく、一緒にやりながら覚えていくものでもあります。音頭取りを育てるために、音頭取りだけを切り離して教えるのではありません。
唄う場がある。
囃す人がいる。
みんなで餅をつく。
何度も一緒にやる。
その中で、次の音頭取りも育っていけばいいと思っています。
餅をつき、唄を伝え、人を育てる
やがて、餅がつき上がります。みんなで心を合わせてついた、三輪の大神さまの祝い餅です。
そして最後は、大和の手打ち。大神神社氏子三十四か郷中、桜井市江包・大西両地区のお綱祭で、男綱と女綱が夫婦和合したあとに行われる、おめでたい手打ちです。
「本日ご参拝の皆々様、ますますご健康でお幸せになりますように、お手を拝借」
めでたくお開きでございます。
千本杵餅つきは、餅をつくだけのものではありません。一緒に唄い、囃し、声を掛け、祝いの場を作る。その中で唄を覚える人が増え、やがて次の音頭取りも育っていく。
餅をつき、唄を伝え、人を育てる。
里唄 三輪社中は、そんな千本杵餅つきを続けていきたいと思っています。


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